生成AIとは何か?その仕組みと活用方法を解説

この記事では、生成AI(ジェネレーティブAI)について詳しく解説します。生成AIとは何か、その仕組み、活用事例、今後の可能性について丁寧にご紹介します。生成AIの基本概念から応用まで幅広く紹介しています。

目次

ジェネレーティブAIとは
生成AIとは

生成AI(Generative AI:ジェネレーティブAI)は、テキスト、画像、音声、動画など、さまざまな形式のコンテンツを生成する人工知能技術です。従来のAIがルールやデータに基づき、特定のタスクを自動化することを主な目的としているのに対し、生成AIは膨大なデータからパターンや関係性を学習し、新しいアイデアや表現を創り出す能力を持っています。

例えば、テキスト生成AIは小説やブログ記事の執筆、ビジネス文書の作成を支援し、画像生成AIは芸術的なイラストやデザイン案の作成、動画生成AIは広告やプロモーション映像の制作をサポートします。また、音声生成AIはナレーションや音声アシスタントに自然な声を提供することが可能です。これらの応用は、クリエイティブな分野で全く新しい手段になると同時に、効率化や生産性向上を実現する手段としても注目されています。

生成AIの仕組みは、主に「ディープラーニング」という技術に基づいています。この技術では、大量のデータを用いてAIモデルを訓練し、特定の特徴を抽出して、それを基に新しいデータを生成します。たとえば、画像生成AIであれば、数百万枚の画像を学習し、その中の色彩や構図、スタイルなどの要素を組み合わせて、新しい画像を生成することができます。

現在、生成AIは日常生活だけでなく、医療や教育、エンターテインメント、さらには製造業など、さまざまな業界で応用が進んでいます。次のセクションでは、生成AIが具体的にどのように活用されているのか、実際の事例を交えながら詳しく解説します。

生成AIの歴史

出典:出典:財務省ウェブサイト 生成AIの仕組みと社会への影響

生成AI(Generative AI)発展の歴史は、以下の主要な出来事と技術革新によって形作られてきました。

生成AIの歴史:AI研究の黎明期
1950年代~1960年代

1956年、米国で開催されたダートマス会議で「人工知能(AI)」という用語が初めて提唱され、AI研究が本格的に始まりました。この時期、数学の定理を自動的に証明するプログラムなど、初期のAIプログラムが開発されました。

生成AIの歴史:エキスパートシステムと冬の時代
1970年代~1980年代

1980年代には、特定の専門知識を持つエキスパートシステムが注目を集めましたが、限界も多く、AI研究は停滞期を迎えました。しかし、1980年代後半からニューラルネットワークの研究が進展し、AI研究は再び活気を取り戻しました。

生成AIの歴史:機械学習とインターネットの普及
1990年代~2000年代

インターネットの普及に伴い、膨大なデータが蓄積され、機械学習の研究が加速しました。この時期、AIはチェスやクイズ番組で人間を凌駕する成果を上げ、注目を集めました。

生成AIの歴史:ディープラーニングと生成モデルの台頭
2010年代

2012年、ディープラーニングを用いた画像認識モデル「AlexNet」が高精度を達成し、AI研究に革命をもたらしました。2014年には、敵対的生成ネットワーク(GAN)が提案され、画像生成の分野で大きな進展がありました。

生成AIの歴史:トランスフォーマーと大規模言語モデルの発展
2017年~現在

2017年に発表されたトランスフォーマー(Transformer)は、自然言語処理の分野で革新をもたらし、その後の大規模言語モデル(LLM)の基盤となりました。2022年には、OpenAIのChatGPTが公開され、高度な対話能力で世界的な注目を集めました。

このように、生成AIは数々の技術革新と研究の積み重ねによって進化し、現在も多様な分野での応用が進んでいます。

生成AIの基本技術

出典:生成AIの技術動向と影響 松尾研究室

生成AI(Generative AI)は、コンピュータが新しい文章や画像、音楽などを作り出す技術です。これを実現するために、いくつかの重要な技術が組み合わされています。

  • ディープラーニング(深層学習)}
    ディープラーニングは、多層のニューラルネットワークを使ってデータから特徴を学習する方法です。これにより、コンピュータは複雑なパターンを理解し、新しいコンテンツを生成する基盤となります。
  • トランスフォーマーモデル
    トランスフォーマーモデルは、特に言語処理で使われるモデルで、文章の中で重要な部分に注意を向ける仕組み(自己注意機構)を持っています。これにより、長い文章の文脈を理解しやすくなり、高品質な文章生成が可能になります。
  • 敵対的生成ネットワーク(GAN)
    GANは、2つのネットワークが競い合うことで、よりリアルなデータを生成する技術です。1つは新しいデータを作り出し、もう1つはそれが本物か偽物かを判断します。この競争により、生成されるデータの質が向上します。
  • 大規模言語モデル(LLM)
    LLMは、大量のテキストデータを学習して、自然な文章を理解・生成するモデルです。これにより、質問に答えたり、文章を要約したりすることができます。
  • 自己教師あり学習
    自己教師あり学習は、ラベル付けされていないデータから自分で学習する方法です。これにより、データの準備にかかる手間を減らし、効率的に学習できます。

これらの技術は互いに関連し合っています。ディープラーニングは、他のすべての技術の基盤となります。トランスフォーマーモデルやGANは、ディープラーニングの応用例であり、特定の目的(例えば、言語処理や画像生成)に特化しています。LLMは、トランスフォーマーモデルを活用しており、自己教師あり学習は、これらのモデルがより少ないデータで効果的に学習するのを助けます。

これらの技術が組み合わさることで、生成AIはより高度で多様なコンテンツを生み出すことが可能となっています。

生成AIとは何か?
生成AIの種類と応用

生成AI(Generative AI)は、テキスト、画像、音声、動画など、多様なコンテンツを自動的に生成する人工知能技術の総称です。その種類と応用範囲は多岐にわたります。以下に主な種類とその応用例を紹介します。

テキスト生成

テキスト生成AIは、「プロンプト」と呼ばれる文章を送信することで、高度な自然言語処理技術を利用して独自のテキストを生成します。これには、文章の執筆や要約、翻訳などが含まれます。例えば、ニュース記事やブログ記事の自動生成、文章の要約、翻訳サービスなど、さまざまな分野で活用されています。生成AIは、人間の言語能力を模倣し、自然で人間らしい文章を生成することができます。

Open AIが開発した「ChatGPT」やGoogleが開発した「Gemini」が該当します。

*プロンプトとは、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)に対して、自然言語で指示や質問を入力することを指します。これにより、ユーザーはAIに対して具体的なタスクを依頼できます。プロンプトエンジニアリングとは、LLMから望ましい出力を得るために、プロンプトの設計や最適化を行う技術です。適切なプロンプトの構築により、AIの性能を最大限に引き出すことが可能となります。

画像生成

生成AIは、リアルな画像を創り出す力も持っています。これにより、イラストや写真、デザインなどを自動生成することが可能です。例えば、写真から絵画を生成したり、新しいデザインの衣服や家具をデザインしたりすることができます。生成AIは、人間の創造性を拡張し、新たな表現方法を生み出す可能性を秘めています。

世界的に利用されている画像生成AIとしては、「Stable Diffusion」や「Midjourney」、「DALL·E 」などが有名です。

Midjourney生成画像
Midjourney生成画像

例えば、Googleの画像生成AI「ImageFX」は、同社の最新モデル「Imagen 3」を搭載した高性能な画像生成ツールです。2024年8月28日に提供が開始されました。

このツールは、ユーザーが入力したテキストに基づいて高品質な画像を生成する能力を持ち、リアルな人物の生成やテキストレンダリングに優れています。日本語と英語のプロンプトに対応しており、初心者からプロフェッショナルまで幅広く利用可能です。さらに、アスペクト比の設定や部分的な画像編集機能も備えており、クリエイティブな制作活動をサポートします。現在、ImageFXは無料で提供されており、Googleアカウントがあれば誰でも利用できます。

音声生成

生成AIは、音声データを基に新しい音声を生成します。音声合成技術を用いて、ナレーションや音楽の制作に利用されています。例えば、音声アシスタントや音声認識システム、音楽制作ソフトなど、さまざまな分野で活用されています。生成AIは、人間の言葉を理解し、自然な音声を生成することができます。

実際に私たちもsora.aiやKn1ghtを利用して音楽や音声を生成して活用しています。例えば、Claude3.5を利用してsora.aiに出力してもらうためのプロンプトを書いてもらいます。

その内容をsora.aiに入力すると次のような楽曲が提供されます。

sora.aiは有料版だと商用利用も可能で、特にSNS投稿やイベントでのちょっとした楽曲を生成するのに、便利です。

生成AI(Generative AI)の活用事例

生成AI(Generative AI)は、ビジネスの多様な分野で活用が進んでいます。現在、多くの企業では、以下のような個別のタスクに生成AIを利用しています。

生成AI(Generative AI)の活用事例
ビジネスでの応用

生成AIは、企業のマーケティング、カスタマーサービス、製品開発などさまざまな場面で活用されています。これにより、業務効率化やクリエイティビティの向上が期待されています。

検索
生成AIを活用することで、膨大なデータから必要な情報を迅速に抽出し、業務効率を向上させることが可能です。例えば、営業担当者が顧客情報を迅速に取得する際に、AIが自動的に関連情報を提供するケースがあります。

資料作成
プレゼンテーション資料や報告書の作成において、生成AIが自動的にコンテンツを生成し、作業時間を大幅に短縮する事例があります。例えば、サイバーエージェントは、生成AIを社内業務に全面的に導入し、映像や書類の作成といった既存業務を6割削減することを目指しています。

文書作成
契約書や提案書などの文書作成において、生成AIが定型文の自動生成や校正を行うことで、ヒューマンエラーの削減と品質向上が期待されています。

例えば、マーケティングでは、ターゲット層に合わせた広告文の自動生成や、顧客のニーズに合わせた商品提案などが可能になります。カスタマーサービスでは、チャットボットによる自動応答や、顧客からの問い合わせに対する適切な回答の生成などが可能になります。

AIエージェントの発展と業務フローの代替

AIエージェントとは、与えられた目標を達成するために自律的に考え、目的達成手段を自己決定しながら動作するAIプログラムのことです。これらのエージェントは、単一の作業だけでなく、複数のタスクを連携して実行する能力を持ち、業務全体のフローを効率化することが可能です。

例えば、Salesforceの「Agentforce」は、商談内容の入力やダッシュボードの作成、案件管理など、AIで自動化できる業務を支援するツールとして注目されています。

今後、AIエージェントのさらなる発展により、これまで人間が行っていた一連の業務フローがAIによって代替される可能性があります。これにより、業務効率の向上やコスト削減が期待される一方、AIとの共生や新たな労働環境への適応が求められるでしょう。

生成AI(Generative AI)の活用事例
クリエイティブ分野での応用

生成AIは、映画や音楽、アートなどのクリエイティブな分野でも注目されています。AIが創り出す新しい表現方法により、新たな作品が生まれています。例えば、映画では、キャラクターの動きやセリフを自動生成したり、背景や風景を自動で生成したりすることができます。

音楽では、新しいメロディーやリズムを生成したり、既存の楽曲をアレンジしたりすることができます。アートでは、絵画や彫刻などの作品を自動生成したり、新しい芸術表現方法を開発したりすることができます。

生成AI(Generative AI)の活用事例
教育分野での応用

教育の分野においても、生成AIは教材の自動生成や学習支援ツールとして活用されています。これにより、学習者に個別最適化されたコンテンツが提供されています。

例えば、学習者のレベルや興味に合わせて、教材の内容や難易度を自動調整したり、学習の進捗状況に合わせて、適切な問題や解説を提供したりすることができます。生成AIは、教育の質を高め、学習効果を向上させる可能性を秘めています。

企業・自治体・学校でのAI活用
組織での生成A I活用の現状

様々な組織でDXのコンサルティングや研修をさせていただくと驚くことは非常に多い。生成AIを調べている方は、非常に増えてきている一方で、特に都市部以外では実践的な活用法だけでなく、知識や使用経験は低いと考えています。

それどころか紙とペン、FAX連絡は未だに変わっていない現状を目にします。「積算資料を本で取り寄せ、手作業のマクロに入れ込む作業が定期的に逼迫している」「経験と勘に頼った需要予測」「顧客の声を営業マンが手作業で営業資料に入れ込む」「大容量データを主導でPivot集計する」「エクセル関数はGoogleで調べながら」等は、多くの企業で見られる現状です。

先進的な事例は多く出てきている一方で、企業内で多くの業務時間に割いている定常業務への影響は限定的であるというのがユーザーとなる組織(学校や自治体・組織など)を見てきた実体験だと考えています。

多くの人は日々の会議や業務を「処理する」ことで精一杯で、新しい技術を学んだり、新しい業務フローを導入する問題解決力を身に着ける余裕が無い、というのは仕方ないのでしょう。

一方で、生成AIツールが組織単位で活用され出していることも事実で、乗り遅れることで競争力に差が出るというのは、新しいテクノロジーが出てきた際のよくある話ではあり、煽るつもりはないのですが、想定される未来だと思います。

(少し話は大きくなりますが)人口という意味では、2040年問題など、1970年代前半生まれの「団塊ジュニア」世代が65歳以上となり、日本の社会にさまざまな問題を引き起こすと予測されています。例えば、労働力不足、社会保障費の増大、 インフラや公共施設の老朽化等、数多くの問題が待ち構えています。

社会保障費の増大や各種老朽化はあっても労働力は不足する。その結果、定常業務を維持することも困難になっていくということの方が、より分かりやすい課題だと考えています。

そうした課題に、生成AIはどのような観点で活用し得るのかを最後に考えてみたいと思います。

生成A Iの課題と未来

生成AI(Generative AI)は、テキストや画像、音声などのコンテンツを自動生成する技術として注目されています。しかし、その急速な発展に伴い、いくつかの課題が指摘されています。

現在の課題

総務省の「令和6年版 情報通信白書」では、生成AIに関連するリスクとして以下が挙げられています。

  • ハルシネーション: 生成AIが事実に基づかない情報をもっともらしく生成する現象で、ユーザーが誤情報を信じ込むリスクがあります。
  • 個人情報の漏洩: プロンプトとして個人情報や機密情報が入力されることで、これらの情報が流出する可能性があります。
  • ディープフェイク: 偽の画像や動画が生成され、情報操作や世論工作に利用されるリスクがあります。
  • バイアスの増幅: 既存の情報に含まれる偏見がAIによって再生成され、不公平な結果を生む可能性があります。

出典:総務省 生成AIが抱える課題

これらの課題に対処するため、技術的な改善や適切なガイドラインの策定が求められています。

未来の展望

出典:生成AIの技術動向と影響 松尾研究室

まず検索体験は大きく変わってきています。インターネット検索はPerplexityやFelo等を使ったことがある方は分かると思いますが、情報のソースを表示し、ファクトチェックをして情報を出してくれます。

ChatGPTでも「検索する」ボタンが追加されました。これによりChatGPTに聞いた質問もインターネット検索結果を用いることができるようになっています。

WordやExcel、Powerpointも既に変わり始めています。Copilotが搭載され、Excelの関数やマクロ設定もコード知識が無くてもCopilotと対話しながら完成させることができるようになってきました。また目的に特化させ「法律/会計/医学的な見地から正しいコメントをする」「相手をはげましたり、なぐさめたり、元気づける」ことができるようになるでしょう。

先ほども御紹介しましたが、AIエージェントの活用は、新しい業務に変わる可能性を秘めています。

AIエージェントは、特定の目的を達成するために環境を認識し、自律的に意思決定を行うAIシステムを指します。これらのエージェントは、単なるワークフローとは異なり、目標達成のために自ら考え、行動する能力を持っています。例えば、Salesforceの「Agentforce」は、商談内容の入力やダッシュボードの作成、案件管理など、AIで自動化できる業務を支援するツールとして注目されています。

Salsforceを使ったことがある方は、情報の収集と分析・活用に一定の難しさがあることは、ご存じだと思います。その点をAIがサポートし、より意思決定のスピードを速めてくれる機能として紹介されています。他にも例えば航空券や宿の予約、新しい賃貸物件の検索等、転職先求人情報の検索・提案等は代替できる可能性が高い分野と言われています。

まとめ

生成AI(Generative AI)は、テキストや画像、音声など多様なコンテンツを自動生成する技術として注目されています。その基盤には、ディープラーニングやトランスフォーマーモデル、敵対的生成ネットワーク(GAN)などの高度な技術が存在します。これらの技術の進化により、生成AIは多くの分野での応用が期待されています。

生成AIはさらに進化し、より高度で多様な応用が可能になると期待されています。私たちの生活やビジネスに新たな可能性をもたらすと共に、様々な課題にも紐づいています。これらの課題に対処し、技術の恩恵を最大限に享受することは重要だと考えています。

そのためには、活用する組織毎に何をどこまで、どういう目的で活用するのか、しっかりとした議論と合意が必要だと考えています。私達は企業だけでなく、自治体や学校等、様々な組織で具体的な活用方法やガイドラインの作成、更には変革の支援をさせていただいています。

現状を無視した生成AIの活用ではなく、現在の業務や組織のカルチャーや風土・歴史は大切にしながらも、課題や困難を共に乗り越えていく、生成AIの未来を私達は共に描き、実現していきたいと考えています。

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