PM(管理受託)物件とSL(サブリース)物件の双方を取り扱う、東京都内のビル管理会社様にて、月次のマンスリーレポート作成・テナント向け請求書発行・物件管理データベース構築を段階的に進めている事例です。現行Excelへのマクロ組込みから始め、共通データモデルを設計しながら、複数物件を横断する統合データベースへの移行までを支援しています。
取り組みの概要
- 業種:ビル管理業(PM/SLの双方を取り扱う中堅管理会社様)
- 所在地:東京都内
- 対象業務:マンスリーレポート作成、テナント向け請求書発行、物件管理データ整備、工事写真台帳作成
- 開始時期:2026年4月
- 形態:Excel/VBA組込型 → 統合データベース連携へ段階移行
- 企業名:非公開
不動産DX|お客様のニーズ
ビル管理業務には、Excelによる定型作業が多く積み上がっています。本事例のお客様でも、月次の業務フローに次のような課題がありました。
- 月次マンスリーレポート作成の負担
PM物件ごとに月次データを「ずらし」、賃料請求書の値を転記し、入金実績と突合する作業を毎月手作業で実施 - 過去データの欠落
月次ずらしによって、2ヶ月以上前のデータがExcel上から消えていく状態。昨対比分析や中長期の推移が見えにくい - マクロの陳腐化
過去に組まれていたVBAマクロが、消費税率変更(8%→10%)以降に動かなくなり、そのまま手作業に戻っていた - 物件ごとに異なる按分ロジック
経費率方式(実費×1.11倍など)、単価方式(メーター×単価)、差額表方式(定額と実費の差額)が混在し、1つの共通マクロでは扱えない - 入金突合の属人化
振込名義とテナント名の不一致(保証会社経由の入金など)があり、突合作業が担当者の経験に依存 - 物件横断の集計が困難
PM物件・SL物件あわせて複数棟を運用しているが、データは各物件のExcelに分散し、横断レポートが作りにくい
本事例では、上記の課題に対し、現行Excelへのマクロ組込みを起点に、段階的にデータ管理基盤を拡張していく進め方を採用しました。
不動産DX|実装内容
本事例では、月次業務の手作業ステップを順番に自動化していく形で、以下の4領域に取り組みました。
マンスリーレポート作成業務の自動化
現行Excelファイルにマクロを組み込み、月次の定型作業を順番に自動化していきました。
- 月次データの一括ずらし(前月→当月、当月→次月)
- 銀行口座CSVの取込と入金突合
- 滞納テナントの自動抽出と滞納明細シートの生成
- 賃料請求書からマンスリーレポートへの自動転記(フロア/テナント変更の差分検出付き)
- 全シートの自動書式適用とエラーチェック
- 消費税率のマスタ参照化(マスタを書き換えるだけで全シートに反映)
社員の方の作業フロー自体は変えず、Excel上のボタンを順に押していくだけで月次業務が完結する状態を目指しています。
テナント向け請求書発行の自動化
物件ごとに異なる按分ロジックを、それぞれの賃料請求書Excelに直接組み込みました。
- 経費率方式・単価方式・差額表方式に対応
- メーター検針値の入力から各テナントへの按分計算
- 賃貸条件マスタを参照する設計で、賃料改定や契約変更時の修正が一箇所に集約
- マンスリーレポート側への自動転記との連携
物件管理データベースの構築
複数物件を横断したデータ管理を実現するため、統合データベースを構築しました。
- 物件マスタ・区画マスタ・テナント・契約・按分式・口座情報の一元管理
- 振込名義の正規化辞書による入金突合の精度向上
- 月次データのアーカイブ自動生成(Excelで上書きされたデータも、DB側に履歴として残る設計)
- Excelからデータベース参照型への段階移行(社員の方はExcelで作業を続けながら、データの真実はDB側へ)
工事写真台帳・工事完了報告書の自動生成
工事写真台帳と工事完了報告書を、Google Drive上の写真フォルダから自動でPDF生成する仕組みを実装しました。
- 撮影日のEXIF読取と和暦表記への自動変換
- 「before / after」フォルダによる原状回復前後の自動振り分け
- 工事前報告書/工事完了報告書/契約書 別紙1(原状写真)の3パターンに対応
- 1ページ3枚レイアウトのPDFを自動生成
不動産DX|取り組みのポイント
取り組みを通じて、Tradivanceは現状から無理なく始め、段階展開と再利用性を両立させるための3つの設計原則を一貫しています。

1. 現行Excelを起点にした段階展開
新しいシステムへの一括移行ではなく、現行Excelファイルへの追加実装から始める進め方を採用しました。社員の方の作業フローを大きく変えることなく、ボタンクリックでの自動化から効果を実感できる形を最初のゴールに置いています。
2. 物件別ロジックを「マスタ」に外出し
物件ごとに異なる按分方式・口座情報・テナント情報を、Excelの「マスタシート」に外出しする設計を取り入れました。同じマクロが複数物件で動く構造のため、2物件目以降は短期間で展開できます。
3. 共通データモデルの先行設計
Excel段階から「将来のデータベース化」を見据え、月次データのアーカイブ・マッチング辞書・口座データの正規化を共通スキーマで設計しました。データベース移行時の再構築コストを抑える狙いです。
不動産DX|お客様の声
取り組みを進めるなかで、お客様からいただいたお声をご紹介します。
物件ごとに事情が違いますし、オーナーごとに好みも書類形式も違います。入退去や敷金・礼金、修繕といった日々発生する個別事情を、汎用のSaaSで吸収しきれず、結局Excelで個別対応する状態が続いていました。業務量は多いのに定常的な手作業の塊で、何とかしたかった部分です。
今回は、現行のExcelに直接マクロを組み込む形で、物件ごとの個別性をそのまま設計に反映してもらえました。月末にボタンを順番に押すだけでマンスリーレポートが出てくる状態は、社員の負担が目に見えて減ったところで効果が分かります。投資対効果としても、汎用SaaSを契約しながら結局Excelで補完する状態から脱却できる点で、十分に納得感があります。
── ビル管理会社 経営者
月末の入金突合で、振込名義とテナント名が一致せず手作業で照合していた部分が、マスタ参照型のマクロで自動化されました。
マンスリーレポートの月次ずらしで2ヶ月以上前のデータが消えていた状態も、データベース化で過去履歴が残るようになり、過年度参照の手間が減りました。社員の作業フローを変えずに導入できたので、現場として助かっています。
── ビル管理会社 経理責任者
ビル管理業界では、PM(管理受託)とSL(サブリース)で業務範囲が大きく異なり、テナント・オーナー・自社の関係性や按分方式も物件ごとに違います。一般的なExcel自動化を依頼すると、こうした業界固有の前提から一つひとつ説明する必要があり、結局は中途半端な形で終わることも少なくありません。
Tradivanceさんは初回ヒアリングの段階でPM/SLの違いや経費率方式・単価方式・差額表方式の差を理解いただいており、ビル管理業のことを分かった上で設計してくれる相手だ、と安心して任せられました。
── ビル管理会社 現場責任者
関連サービス
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