AIエージェントとは?生成AIとの違いや利用するメリット

こんにちは。Tradivanceの宮坂です。

最近、「自律型AIエージェント」や「AIエージェント」という言葉を耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか。新しいツールやサービスが次々と生まれており、正直なところ「ChatGPTは知っているけれど、AIエージェントって何だろう?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

特に、ChatGPTの登場以降、ビジネスにおける生成AIの活用が急速に進んでいます。その中でも、「AIエージェント」は単一の作業だけではなく、業務の目的に向かって自ら考え学習し、解決していく「AI社員」の実現が可能になるため、人材不足を解消するカギとして期待を集めています。

本記事では、話題のAIエージェントについて、起業家・AIエンジニアの安野貴博氏の解説と合わせて、わかりやすくご紹介します。

目次

AI エージェントを定義する主な原則
AI エージェントとは?

AI エージェントを定義する主な原則| AI エージェントとは?

AIエージェントとは、環境と対話し、データを収集・分析して自律的に意思決定を行い、設定された目標を達成するソフトウェアプログラムです。例えば、コンタクトセンターにおけるAIエージェントは、顧客からの問い合わせに自動で対応し、必要に応じて人間のオペレーターに引き継ぐことができます。

AIエージェントの主な原則・特徴として、以下が挙げられます。

  • 自律性: 人間の介入なしに、独自にタスクを実行します。
  • 適応性: 環境の変化に応じて行動を調整し、最適な結果を追求します。
  • 目標指向性: 事前に設定された目標を達成するために行動します。
  • 学習能力: 経験や新たなデータから学び、性能を向上させます。

これらの原則に基づき、AIエージェントは業務の自動化や効率化、顧客体験の向上など、さまざまな分野での活用が期待されています。

例えば、AIエージェントを活用することで、電話の応答やメール送信などの業務を自動化し、人材不足の解消や業務効率の向上に寄与することができます。

AIエージェントとは
AIエージェントと生成AI(ジェネレーティブAI)の違い

AIエージェントとは、環境と対話し、データを収集・分析して自律的に意思決定を行い、設定された目標を達成するソフトウェアプログラムであるとご紹介しました。

では、昨今話題の生成AI(Generative AI)との違いはどこにあるのでしょうか?

生成AI(Generative AI)は、ユーザーからの指示に基づき、文章や画像、音声などの新たなコンテンツを生成するAI技術を指します。

AIエージェントは、複数のタスクを横断的に組み合わせて実行し、目標達成に向けて自律的に行動するのに対し、生成AIは特定の指示に応じて新しいコンテンツを生成する点で異なります。

例えば、AIエージェントは宿や航空券の予約がイメージに近いと思います。

皆さんも1カ月後の旅行で宿泊先の宿を探したことはあるでしょう。今はGoogle等の検索結果でも見れますが、いくつかのポータルサイトを開いたり、宿のHPを開いて確認・比較する作業が発生します。

AIエージェントであれば予算や目的に合わせて、複数のサービスを比較して、目的に合った候補を提案してくれるものです。

一方で、生成AIは、与えられたプロンプトに基づいて文章や画像を生成し、クリエイティブな作業を支援します。例えば、ポータルサイトAとB、宿のHPの画像やテキストを生成AIに送り、比較表を作ってもらう等をすれば、どこが良いかを整理することは生成AIもできるでしょう。

しかし、2024年末時点では複数サイトを調べて比較し、提案することはできていません。これは飛行機等の予約も同様ですし、賃貸物件・保険商品探し等でも同じような状況だと思います。

このように、AIエージェントと生成AIの違いには「目的に対する自律性」があると言えます。更に、その先には現在のChatGPTをはじめとした生成AIが「情報(画像や動画も含む)を引き出す窓口」なのに対し、AIエージェントは「AIエージェント同氏が協力して複雑なタスクも処理する」という未来もあると言われています。

AIエージェントの仕組みと特徴

それではAIエージェントの仕組と特徴について、より具体的にご紹介したいと思います。

AIエージェントの仕組み

AIエージェントは、情報を集めて(インプット)、それをもとに考え(プロセス)、実際に行動する(アウトプット)という仕組みで動きます。たとえば、自動運転車やお掃除ロボットがうまく動けるのも、この仕組みがあるからです。以下では、それぞれのステップを簡単に説明します。

インプット(周りの状況を把握する)

AIエージェントは、まず周りの環境から必要な情報を集めます。この環境とは、エージェントが働く場所や状況のことです。自動運転車の場合、道路や信号、歩行者が「環境」に当たります。AIはセンサーという「目」や「耳」のような道具を使って、この環境からデータを集めます。たとえば、カメラやレーダーで道路の状況を見たり、音声アシスタントが私たちの声を聞いたりします。このインプットがなければ、AIは動き出すことができません。

プロセス(集めた情報を考える)

次に、AIエージェントは集めた情報をもとに「どうするべきか」を考えます。このステップでは、AIの頭脳ともいえるプログラムが活躍します。たとえば、自動運転車は「前に車がいるから減速しよう」や「信号が赤だから止まろう」といった判断を行います。この判断は、過去のデータをもとに学習したり、シミュレーションを繰り返して鍛えられた仕組みによるものです。参考記事(arXiv 2404.11584)では、この意思決定に使われる高度な機械学習の仕組みについて詳しく説明されています。

アウトプット(考えた結果を行動に移す)

最後に、AIエージェントは自分で考えたことを実際に行動に移します。これを支えるのが「アクチュエータ」と呼ばれる仕組みです。たとえば、自動運転車ならブレーキを踏んだり、ハンドルを切ったりします。お掃除ロボットならゴミを吸い取る動きをします。このアウトプットが正確に行われることで、AIエージェントは安全かつ効果的に働くことができます。

AIエージェントの特徴

AIエージェントは、生成AIや従来のシステムと比べて、明確に区別できるいくつかの特徴を持っています。

これにより、AIエージェントは複雑なタスクを自律的にこなし、私たちの生活やビジネスに大きく役立っています。記事冒頭でも簡単にご紹介しましたが、AIエージェントを特徴づける「自律性」「相互作用能力」「学習能力」「目標指向性」という4つの特性をわかりやすく解説します。

自律性:人の指示なしで動ける

AIエージェントの最も大きな特徴の一つが、自律的に動けることです。これにより、事前にプログラムされた単純な指示だけではなく、環境を理解して自ら行動を選択することができます。

例えば、自動運転車は道路の状況を認識しながら、信号や歩行者を避けるためにブレーキを踏むなど、複数の判断を瞬時に行います。生成AIが人間からの入力に対して結果を出すのに対し、AIエージェントは連続的な目標達成を進める点で優れています。

相互作用能力:他のシステムや人と協力

AIエージェントは、他のシステムや人間と協力してタスクを進める能力に優れています。

例えば、スマートホームのAIエージェントは、照明や空調など複数の家電を連携させて快適な環境を作り出します。また、会議のスケジュール調整を行うAIエージェントは、カレンダーアプリやメッセージアプリと連携し、複数の人の予定を考慮して最適な時間を提案します。このように、AIエージェントは他の技術やサービスと連携し、より複雑なタスクを実現します。

今の生成AIは「文章や画像を生成する」等の特定作業をこなすだけで、目的に合わせて他のツールを使いこなすといったことは、かなり限定的にしかできません。他の技術やサービスと連携して目的を達成することができるのが大きな特徴と言えます。

学習能力:経験を積んで賢くなる

AIエージェントは、一度のタスクをこなすだけでなく、経験を活かして成長する能力を持っています。これには、強化学習や継続的学習といった技術が用いられます。

たとえば、お掃除ロボットが何度も部屋を掃除する中で、どこにゴミが溜まりやすいかを学習し、効率的に動けるようになるのがその一例です。時間が経つほど効果・効率を高めることができます。

目標指向性:目標達成のために行動する

AIエージェントの「目標指向性」は、旅行全体を計画し、目標達成のために調整する能力です。

例えば、「来月の週末に京都へ旅行したい」とすると、現在の検索サイトや比較サイト(例:Google)は、フライトや宿泊施設の情報を提供し、利用者自身がそれを比較して選択します。

一方、AIエージェントは「来月の週末に予算5万円で京都旅行」という目標を受け取ると、予算やスケジュールを考慮して最適なフライトや宿を選ぶだけでなく、空港からホテル、観光地までの移動手段も含めて全体の計画を立てます。

検索サイトが「情報提供」にとどまるのに対し、AIエージェントは「目標達成のために全体を管理し調整する」という点で、利用者の手間を大幅に削減するのが大きな違いです。

AIエージェントの種類

AIエージェントの種類|単一エージェントシステムと複数エージェントシステム

AIエージェント自体が、まだまだ認知されていませんが、現在ではアーキテクシャ(システム構成)の面から2つの種類があると言われています。

AIエージェントには、シングルエージェントシステムマルチエージェントシステムの2つの種類があるとされています。特に現在は、マルチエージェントシステムに関する研究が盛んに進んでおり、こちらについて詳しくご紹介したいと思います。

AIエージェントの種類
シングルエージェントシステム

シングルエージェントシステムとは、1つのAIエージェントだけが働く仕組みのことです。このエージェントは、周りの環境を観察しながら、自分で考えてタスクをこなします。他のAIと協力したり競争したりすることはなく、1人で行動するのが特徴です。

シングルエージェントのいいところは、作るのが簡単で、動かすのにあまり多くのコンピューターの力を使わないことです。また、管理がしやすいので、少ない時間やコストで導入できます。一方で、複雑な仕事をこなすのが難しいことや、タスクが増えたり複雑になったときに対応しにくいことです。

たとえば、シングルエージェントの例としては、質問に答えるためだけに作られたチャットボットや、単純な仕事を自動で行うプログラムがあります。また、データを集めてレポートを作るような簡単な作業もシングルエージェントの得意分野です。

AIエージェントの種類
マルチエージェントシステム

マルチエージェントシステムは、たくさんのAIエージェントがチームのように協力して仕事をする仕組みです。それぞれのエージェントは、自分の得意な仕事や役割を持っていて、お互いに助け合いながら目標を達成します。

例えば、サッカーチームをイメージしてみてください。一人がボールを持って走り、もう一人がパスを出し、さらに別の人がゴールを決める、というように、それぞれが自分の役割を果たしてチーム全体で勝つことを目指します。マルチエージェントシステムも同じように、一つの目標を達成するために、情報を集めるエージェント、分析するエージェント、結果を報告するエージェントが力を合わせて働きます。

マルチエージェントシステム
コミュニケーションスタイル 

AIエージェント同士も、人間と同じように「話し合ったり」「協力したり」して、一緒に仕事を進めます。そのとき、どんな目的があるか状況がどうなっているかによって、AIエージェントたちの「話し合い方」や「協力の仕方」が変わります。この仕組みを「コミュニケーションスタイル」と言い、大きく3つのパターンに分けられます。

コミュニケーションスタイルの3つの種類

特徴使われる場面
協調型同じ目標を目指して助け合う
情報を共有する
それぞれの強みを活かす
チームでの開発
難しい問題を一緒に解決
いろんなサービスを連携する場合
討論型いろいろな意見を出し合う
論理的に話し合う
みんなで決める
重要な決断をするとき
品質を良くする
リスクを調べる場合
競争型それぞれの目標を追いかける
戦略的に判断する
競争しながら成果を出す
市場のシミュレーション
ゲーム理論の検証
政策の効果を考えるとき

たとえば、協調型ではAIエージェントがチームになり、情報を共有して効率よく仕事を進めます。学校のグループ活動でみんなが役割分担して目標を達成するのと似ています。

討論型では、いろいろなアイデアを出し合い、どれが一番良いかを話し合います。例えば、みんなで意見を出して次のイベントの計画を立てるような場面です。

競争型では、エージェントが自分の目標を達成するために競い合います。これは、運動会のようにそれぞれが一番を目指す場面を想像するとわかりやすいです。

マルチエージェントシステム
コミュニケーション構造

AIエージェント同士が情報をやり取りする方法は、組織やネットワークの仕組みに似ています。これらの構造は、目的や状況に応じて使い分けられます。以下に、主なコミュニケーション構造を表形式でまとめました。

構造パターンイメージ特徴適用シーン
階層型会社の組織図明確な指揮命令系統
段階的な情報伝達
責任範囲の明確化
大規模開発プロジェクト
複雑なタスク管理
プロセス管理が重要な場面
分散型SNSのユーザーネットワーク自由な情報交換
エージェント間の直接対話
フラットな関係性
社会シミュレーション
創造的な問題解決
柔軟な協力が必要な場面
集中型カスタマーサービス中央での一括管理
一貫した判断基準
情報の集中管理
重要な意思決定
セキュリティ管理
リソース最適化
共有プール型掲示板システム共通の情報スペース
選択的な情報アクセス
効率的な情報共有
大規模な情報共有
チーム間連携
非同期での協力作業

小規模なシステムでは管理コストの低さから集中型が使われることが多いです。規模の拡大に伴い分散型共有プール型が使われます。最近は特に、MetaGPT(Hong et al., 2023)2などで採用されている共有プール型が注目されています。 ​

AIエージェントの情報交換方法として、「共有プール型」という仕組みがあります。これは、みんなが使える共通の情報スペースを作り、必要な情報を自由に取り出せるようにする方法です。最近、この方法をさらに進化させ、特定の仕事を専門に行うエージェントと、仕事を割り振るエージェントが協力してタスクを達成する仕組みが研究されています。

例えば、「TRANSAGENTS」というシステムでは、CEO、編集者、翻訳者、校正者など、それぞれの役割を持つエージェントが協力して、小説の翻訳を効率的に行うことができました。

このように、エージェント同士が役割分担し、協力してタスクを進めることで、より複雑な問題を解決できる可能性が広がっています。

AIエージェントの活用例

AIエージェントは、これまでの生成AIが単一の業務単位で自動化・省力化してきた業務を業務目的ベースで、解決までサポートしてくれることが期待されています。

今回は、カスタマーサクセスや営業活動支援、バックオフィス業務を対象に、現在の生成AIとAIエージェントとの違いについて整理しながら、どのようなAIエージェントの活用が進んでいる、または期待されているのかを御紹介したいと思います。

AIエージェントの活用例
カスタマーサービス/CS

企業のカスタマーサービス部門では、AIエージェントが顧客からの問い合わせに対応するチャットボットとしてテキスト・音声のどちらでも活用されることが期待されています。

これまではコールセンターのIVRのように問合せ電話の電話内容を音声で分類したり、チャットボットが問合せ内容にあわせたFAQのリンクを送る等がありました。

AIエージェントでは、問合せ内容を理解し、その問合せの元になっている顧客の悩みを解決する為の提案をすることができます。例えば、クレジットカードの問合せでは「ポイントプログラムの問合せ」と「支払い状況の問合せ」が別のコールセンターで対応されるので、電話中に取次が発生するということもあると思います。

それを1つの問合せ窓口で解決できてしまう(裏側のデータ管理等のシステム制約はあるかもしれませんが)といった、より高度なCS対応ができるようになるでしょう。また「ポイントプログラム」も現行のポイントだけでなく、「後●ポイント貯めれば□□の特典がある」等を顧客ニーズを想定した回答・提案もできるようになるかもしれません。

活用領域期待される機能想定効果
問合せ対応・顧客の意図と会話の流れを理解したコミュニケーション
・複数の問題の関連性を把握する
・複雑な問題の自動解決
・解決時間の短縮
情報活用・関連情報を自動で集める能力
・状況に応じて説明を最適化する能力
・回答の正確さ向上
・顧客理解の深まり
・説明の質の向上
プロアクティブ支援・潜在的な問題を予測する能力
・予防的なアドバイスを提供する能力
・最適なタイミングで介入する能力
・問題の未然防止
・顧客体験の向上
・信頼関係の構築

AIエージェントの活用例
営業活動支援

営業分野では、AIエージェントが営業担当者をサポートするツールとして期待されています。例えば、顧客の過去の購買履歴や市場動向を分析し、最適な提案内容を自動で作成することが可能となります。

例えば、Salesforceが提供する「Agentforce」は、営業プロセス全体をサポートする高度なAIエージェント機能を備えていることがリリースされています。

Agentforceは、営業担当者が顧客とのやり取りをシミュレーションできる「Sales Coach」機能を提供します。これにより、営業担当者は具体的な案件に合わせたセールストークや反論の練習が可能となり、実際の商談での成功率を高めることが期待されます。

さらに、Agentforceは見込み顧客の絞込みや会議の設定など、従来は人手で行っていたタスクを自動化します。これにより、営業チームはより戦略的な業務に集中でき、全体的な生産性の向上が見込まれます。

活用領域期待される機能想定効果
戦略立案・商談記録等、複数の要因を分析し、最適な営業アプローチを提案
・リソースの効果的な配分を支援
・営業活動が効率化され、優先順位の最適化が図れる
商談準備・市場動向や顧客データの分析を通じ、見込み客のニーズを把握
・顧客に合わせた提案資料を自動生成
・提案の精度が向上し、準備時間が短縮される
・営業社員間の提案数やサポートの質が均質化される
商談実施・会話のリアルタイム分析により、適切な返答や提案をサポート
・リスクやチャンスを即座に評価
・商談の質が向上し、成約率の向上が期待

AIエージェントの活用例
バックオフィス業務の高度化

バックオフィスでは定型業務の自動化を超えて、状況判断や例外処理を含む複雑な業務の遂行についてもAIエージェントの活躍が期待できます。この領域では生成AI等により、徐々に様々な業務が自動化されてきていますが、更に複数のアプリやワークフロー間での分断がなくなり、自動化できる範囲が広くなります。

部門でいると経理・財務、人事・労務、法務、総務、調達購買等が該当するでしょう。

例えば、スカウトメールの自動生成等は、既にGPTsなどにより自動生成ができますが、人事であれば採用のスカウトメールや履歴書等のデータと評価データを紐づけ、どのような人材をどこから何人採用すればよいかといった採用計画を立てやすくなるかもしれません。

活用領域期待される機能想定効果
調達購買・経費データの集約と改善点の提案
・不正経費のリスク提案
・コスト削減機会の拡大
・不正支出の防止
人事・労務・採用計画の立案
・キャリア経験に合わせた人材配置案の提案
・稼働実績に基づく配置案作成
・データに基づく採用・人員配置計画の立案
経理・財務・請求書の支払い状況に合わせた潰し込みや必要書類の回収
・グループ会社間のデータ集約
・定型業務の自動化
・データ集約で明らかになった不足データの回収と再集計の自動化

AIエージェントを活用する際の課題

AIエージェントを活用する際の課題
技術的課題

AIエージェントのみに関わらずAI開発には、高品質かつ大量のデータが必要です。データ上限が生成AIの機能開発上限として語られることも実際にあります。

一方で、計算資源(コンピュート)を高める為にコンピュータを高性能にし台数を増やすことでAIの計算能力を高める取組みも行われています。また人間型のロボットにAIを搭載させ、デジタル化されていないリアルデータの学習も進むと言われています。例えば、1X Technologiesというノルウェーの首都オスロ近郊に本社を置くロボットスタートアップ企業があります。この会社は、ヒューマノイドロボットの開発や、ロボットシステムのシミュレーション訓練の効率化に取り組んでいます。

インプットさせる情報や処理能力等、様々な技術的課題はあり、今後のAIエージェントの発展と浸透を妨げる可能性があることは事実です。一方で、同課題を解決する取り組みも進んでいます。

AIエージェントを活用する際の課題
情報管理の課題

AIエージェントは大量のデータを処理するため、プライバシー保護が重要な課題となります。例えば、2023年にサムスンの従業員がAIツールを使用して機密情報を処理した結果、重要なデータが外部に漏洩するという事態が発生しました。

このような事例は、AIエージェントが個人情報や機密情報を不適切に扱うリスクを示しています。情報漏洩は、個人のプライバシー侵害や企業の信用失墜につながります。

さらに、AIシステムの透明性も課題です。ブラックボックス化されたアルゴリズムでは、意思決定の過程が不明瞭であり、ユーザーの信頼を損なう可能性があります。これらの課題に対処するため、AIの開発者や利用者は、データの適切な管理とシステムの透明性確保に努める必要があります。

AIエージェントを活用する際の課題
実用面での課題

高性能なAIエージェントを開発・導入するためには一定の投資が必要です。また、過去にRPAが流行った時に野良RPAが跋扈し、管理運用コストが増大するといった問題も発生しました。

導入には保守運用を見越した体制やコストの試算は必要になるでしょう。また、技術革新も早い領域なので、どの領域にいつから取り入れていくかや受け入れる側の組織や人側の習熟や学習も必要になるでしょう。

特に大きな組織や自治体などで異動が定期的に起こる組織では、人とAIエージェントとの機能分担や情報管理、保守運用を見越した体制、導入スケジュールの策定等、様々な検討が必要になります。

AIエージェントとは?まとめ

本記事ではAIエージェントが秘める、企業の業務効率化やサービス向上に大きな可能性を御紹介しました。

例えば、カスタマーサービスにおいて、AIエージェントは顧客からの問い合わせに迅速かつ的確に対応し、顧客満足度の向上に寄与します。また、営業活動支援では、顧客データの分析を通じて最適な提案を行い、成約率の向上が期待できます。さらに、バックオフィス業務の高度化により、定型的な事務作業を自動化し、従業員がより戦略的な業務に集中できる環境を整えます。

AIエージェントの導入を検討する際は、信頼性の向上やセキュリティの確保、さらには倫理的な観点からの検討など、重要な課題も存在します。しかし、これらの課題に適切に対処することで、AIエージェントは企業の強力なパートナーとなり得ます。

AI技術の進化は日進月歩であり、今後も新たな活用方法が登場することでしょう。自社の業務にどのようにAIエージェントを取り入れるか、具体的な活用方法や導入プロセスについて知りたい方は、ぜひ最新の情報を収集してみてください。

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