こんにちは。Tradivanceです。
「社内の生成AIのルールを作ってほしい」と頼まれたものの、何から手をつければよいか分からない。そう感じている担当の方は少なくないと思います。
特に「国の生成AIガイドラインは何を読めばよいのか」「社内ルールに何を書けばよいのか」「ひな形をそのまま使ってよいのか」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
国のAIのルールの枠組みは、AI法、内閣府の指針、各府省のガイドラインの3層で整ってきました。企業向けの「AI事業者ガイドライン」も、2026年3月の第1.2版でAIエージェントの扱いが加わっています。
一方で、民間のひな形の代表例は2023年のままで、今の使い方に合わせて足したほうがよい部分が出てきています。
だからこそ本記事では、生成AIガイドラインを社内で作るときに何を参照し、何を入れ、どう作り、どう回すかを、国の資料の根拠つきで解説していきます。
本記事で分かること
- 企業がまず読む国の資料3つと、AI法の位置づけ
- 社内ルールに入れる10項目と、それぞれの根拠
- 作り方の6ステップと、ひな形に足すもの
- AIエージェントの扱いと、作って終わりにしない運用
生成AIガイドラインとは|社内ルールで決めることと、今つくる理由
先に結論をお伝えすると「生成AIガイドライン」は、社員が業務で生成AIを使うときに守るルールをまとめた社内文書です。
使ってよいサービス、入力してはいけない情報、生成物の確かめ方などを決めます。AI法や内閣府の指針で作成が求められているものではなく、各社が自主的に整える社内ルールです。
生成AIの利用ガイドライン・AIポリシー・利用規程の違い
似た名前の文書があり、会社によって呼び方が違います。分かりやすくするために、この記事では、次のように呼び分けます。
| 名前 | 誰に向けて | 何を書くか |
|---|---|---|
| AIポリシー | 社内と社外 | 会社としてAIにどう向き合うかの方針 |
| 生成AIガイドライン | 生成AIを使う社員 | 使ってよいサービスや入力の線引きなど、使い方のルール |
| 利用規程 | 社員 | 就業規則などと同じく、正式な社内規程として定めるルール |
AI事業者ガイドラインも、会社の方針を「自社の取組方針」と呼び、「AIポリシー」など呼び方は会社ごとに違うとしています。
なお、AIポリシーを社外に公表している会社はまだ少数です。IPAの「DX動向2026」では、「AIポリシーを定め、社外に公表している」と答えた企業は3.7%でした(AIを導入・試験利用・検討中の企業が対象)。
生成AIガイドラインが今必要な3つの理由
- AIの利用をめぐるリスク:IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」で、組織向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出されました。解説書は例に、個人で使うAIサービスを業務に使う「シャドーAI」(たとえば、個人のスマホのAIアプリに会議のメモを貼って要約させるような使い方)を挙げ、対策に「AIガバナンスおよびサービス利用規定の整備」を挙げています
- 個人情報・機密の入力:個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力する場合は、入力する会社が、サービスの提供者がその個人データを機械学習に使わないことなどを「十分に確認すること」としています
- 著作権:文化庁のチェックリスト&ガイダンス(2024年7月31日)は、業務でAIを使う側に「生成AIの利用に関する内部的ルールの策定等、著作権侵害に対する適切な予防措置を講じることが望まれます」としています
どれも、社員一人ひとりの注意に任せると判断がばらつくものです。会社として線を引けば、現場は迷わずに使えます。
企業の策定状況
公的な調査の数値です。2つの調査は対象も聞き方も違うため、比べるときは調査の時期と対象もあわせてご覧ください。
| 調査 | 時期 | 回答者・対象 | 数値 |
|---|---|---|---|
| 総務省「令和8年版 情報通信白書」 | 2026年1〜2月 | 従業員10名以上で、2025年までにデジタル化に取り組み始めた企業の管理職以上(調査全体の有効回答は日本515社) | 「全社的な指針やガイドラインを整備している」41.1%(大企業44.9%・中小企業29.1%) |
| IPA「DX動向2026」 | 2026年4月中旬〜6月中旬 | AIを導入・試験利用・検討中の企業(n=1,189) | 「社内ガイドラインやルールは全社的なものを定めている」32.5%・「どちらも定めていない」16.7% |
ざっくり言えば、全社のルールを整えている会社は3〜4割ほどで、中小企業ではまだ少ない、という状況です。
日本企業の対策はガイドラインの整備が最も多く、出す前の審査や出したあとの検証の仕組みは他の国より少ない、という公的データの見方は、「生成AIの課題を公的データで見直す」で整理しています。
国の生成AIガイドラインの全体像|AI事業者ガイドライン・AI法・内閣府の指針

企業がまず読むのは、AI事業者ガイドライン第1.2版の第5部「AI利用者」、個人情報保護委員会の注意喚起、文化庁のチェックリスト&ガイダンスの3つです。
AI法と内閣府の指針は、自社がどんな立場にあたるかを確かめるために読みます。デジタル庁と文部科学省の資料は、行政・学校向けの資料です。
国の枠組みは、2025年9月に全面施行されたAI法(正式名称:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)を土台に、内閣府の指針、各府省のガイドラインが重なる3層になっています。
内閣府の指針はすべての人に向けた基本の考え方、各府省のガイドラインは立場ごとの具体的な手引き、という役割分担です。
| 資料 | 出した機関・最新の版 | 企業の読者の優先度 | 社内ルールで使う場所 |
|---|---|---|---|
| AI事業者ガイドライン | 総務省・経済産業省/第1.2版(2026年3月31日) | まず読む | 全体の考え方、AIエージェント |
| 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 | 個人情報保護委員会/2023年6月2日 | まず読む | 入力してはいけない情報 |
| AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス | 文化庁/2024年7月31日 | まず読む | 生成物の使い方 |
| AI法 | 2025年9月1日全面施行 | 必要に応じて | 会社の位置づけ |
| 内閣府の適正性確保に関する指針 | 人工知能戦略本部/2025年12月19日 | 必要に応じて | 基本の考え方 |
| デジタル庁のガイドライン | 第2.0版(2026年6月12日決定) | 行政・学校向け | 章立ての参考 |
| 文部科学省のガイドライン | 初等中等 Ver.2.0(2024年12月26日)ほか | 行政・学校向け | 学校での扱い |
総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」で利用企業向けに書かれていること
AI事業者ガイドラインは、「我が国におけるAIガバナンスの統一的な指針を示す」資料です。最新は第1.2版(2026年3月31日)で、第1.1版以前のページは旧版の扱いです。
社内で生成AIを使う会社は、「事業活動において、AIシステム又はAIサービスを利用する事業者」であるAI利用者にあたります。本編の第5部と別添から、社内ルールに直結するものは次のとおりです。
- 提供者が想定した範囲内で使う(U-2)
- 個人情報や機密情報を不適切に入力しない(U-4・U-5)
- 提供者が定めたサービス規約を守る(U-7)
- 入力・出力の記録などの操作履歴を管理する(別添)
- 重大な影響が生じ得るときは人の判断を挟む(別添)
- 不要なデータを減らし、データを最小限にする(別添)
※括弧内の「U-2」などはガイドライン本編の項目番号、「別添」は解説資料を指します。
社内ルールに置きかえると、「会社が契約していないサービスに取引先の資料を貼り付けない」「入力した内容がAIの学習に使われるかを利用規約で確かめる」「AIの下書きをそのまま社外に出さない」といった決まりにつながります。
AI法と内閣府の指針は会社に何を求めているか
| 法令・指針 | 原文の書き方 |
|---|---|
| AI法 第7条 | 事業活動でAIを活用する事業者は、活用による「事業活動の効率化及び高度化並びに新産業の創出に努める」とともに、国と自治体の施策に「協力しなければならない」 |
| 内閣府の指針 | 全ての主体の「自主的かつ能動的な取組を促す」もの。人間中心など10の要素と4つの基本方針を示す |
AI法も内閣府の指針も、社内ルールを作ること自体を会社に求めてはいません。指針のうち具体的な取り組みを書いた部分(「2」)も、「AIを活用した製品、サービスの開発、提供をする活用事業者」に向けた書き方です。
なお、AI法の章立ては総則・基本的施策・人工知能基本計画・人工知能戦略本部と附則で、罰則の章はありません。
社内で使うだけの会社は、指針の全ての主体に向けた要素と、AI事業者ガイドラインの「AI利用者」の項を参考にするとよいでしょう。
デジタル庁・文部科学省・自治体の生成AIガイドライン
デジタル庁のガイドラインは第2.0版(2026年6月12日決定・9月1日施行)で、各府省のAI統括責任者(CAIO)が職員向けの利用ルールを作る仕組みです。教育では、文部科学省が初等中等教育向け(Ver.2.0)と大学・高専向けの資料を出しています。
自治体については、内閣府の指針が「AIの適正な活用、リスク管理における責任者を明確化する」としています。各自治体が公開しているガイドラインも参考になります。
企業の方は、章立てを借りるときの参考として目を通しておく程度でよいでしょう。
生成AIガイドラインに入れる10項目|禁止事項・入力してよい情報・著作権

生成AIガイドラインには「入力する前」「生成物を使う前」「困ったとき」に分けて、次の10項目を入れることをおすすめします。根拠にできる公的資料などを添えたので、社内で説明するときの裏付けに使えます。
| 項目 | 何を決めるか | 根拠にできる資料 |
|---|---|---|
| ①目的と対象 | 誰が、どの業務で使うときのルールか | JDLAのひな形 |
| ②使ってよいサービス | 使ってよいサービスの一覧 | JDLAのひな形(ホワイトリスト方式) |
| ③アカウント | 個人アカウントの業務利用の扱い | IPA 10大脅威の解説書 |
| ④入力してはいけない情報 | 個人情報、他社の秘密、自社の機密 | 個人情報保護委員会、JDLAのひな形 |
| ⑤学習に使わせない設定 | 学習に使わせない設定と約款の確認 | IPA 10大脅威の解説書 |
| ⑥生成物の確認 | 正確さ、根拠、事実関係の確認 | AI事業者ガイドライン、デジタル庁のひな形(行政向け・参考) |
| ⑦著作権などの権利 | 使う前の類似の確認、生成過程の記録 | 文化庁のチェックリスト |
| ⑧禁止する使い方 | 任せない用途と、人の判断を挟む場面 | JDLAのひな形、AI事業者ガイドライン |
| ⑨AIエージェント・社員が作るツール | 任せてよい操作、人の確認なしに動くものを作るときの届け出 | AI事業者ガイドライン、デジタル庁(行政向け・参考) |
| ⑩相談・報告の窓口と違反時の対応 | 相談先、報告先、違反したときの扱い | IPAの解説書、デジタル庁のひな形(行政向け・参考) |
⑨は後の章で扱います。ここでは、書き方で迷いやすい3つを見ていきましょう。
生成AIガイドラインの禁止事項の書き方|「禁止」と「確認すれば可」を分ける
禁止事項を並べるだけでは、現場は「何なら使ってよいのか」で迷います。禁止の横に、確かめれば使ってよい形を並べるのがおすすめです。次の表は当社が提案する例です。
| 禁止 | 確認すれば可 |
|---|---|
| 会社が認めていないサービスや個人アカウントで業務に使う | 会社が認めたサービスを、会社のアカウントで使う |
| 他社から預かった秘密や、公表前の数字を入力する | 社名・氏名・金額を伏せた社内資料を入力する |
| 生成物を確かめずに社外へ出す | 事実・数字・根拠を担当者が確かめてから出す |
| 人事評価をAIの出力だけで決める | 参考に使うときは人が判断し、評価される本人にAIの利用を伝える |
人事評価の行は、AI事業者ガイドラインが評価の参考にする場合に「AIを利用している旨を評価対象となっている当該特定の個人又は集団に対して通知し」としている点を踏まえています。
入力してよい情報の線引き|自社で決める例
次の表も当社の提案です。会社が契約したサービスか、個人で登録したサービスかで、線の位置は変わります。
| 区分 | 情報の例 |
|---|---|
| そのまま入力してよい | 自社サイトやプレスリリースなど、公開済みの情報 |
| 伏せれば入力してよい | 社名・氏名・金額などを伏せた社内資料 |
| 入力禁止 | 他社から秘密保持の約束で預かった情報、公表前の数字 |
| 条件を確かめて決める | 顧客や社員の個人情報(サービスごとに可否を決める) |
個人情報保護委員会は、個人情報を入力するときは利用目的の達成に「必要な範囲内であることを十分に確認すること」を求めています。また、本人の同意を得ずに個人データを入力する場合は、サービスの提供者がそのデータを機械学習に使わないことなどを確かめるよう求めています。
そのため個人情報は、一律に入力禁止とするより、条件を確かめて決める区分に置くほうが注意喚起の書き方に沿います。
生成AIの著作権で社内ルールに書くこと
文化庁のチェックリスト&ガイダンスの「AI利用者(業務利用者)」の項が、社内ルールの下敷きになります。
- 使う前に似ていないか確かめる:「まずは既存の著作物と類似していないかを確認」することが必要とされ、文章検索・画像検索が例に挙がっています(3-1-5)
- 生成の過程を残す:プロンプト等の生成過程を確認可能にしておくよう「努めることが望まれます」とされています(3-1-7)
- トラブル時の対応を決めておく:侵害が生じた場合の対応を「あらかじめ想定し検討しておくことが望まれます」とされています(3-1-2)
※括弧内の「3-1-5」などは、文化庁のチェックリスト&ガイダンスにある項目の番号です。
著作権の侵害にあたるかどうかは個別の事情で変わるため、法務や専門家に相談する流れもルールに書いておくと安心です。
出典:文化庁
生成AIガイドラインの作り方|作成から周知までの6ステップ

生成AIガイドラインは「今の使われ方を調べる」から「周知と研修」までの6ステップで作ると、現場で守られるルールになりやすくなります。
IPAの「DX動向2026」では、AIの導入・運用上の課題として「適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい」が39.7%でした。順番を決めて進めると、手が止まりにくくなります。
今の使われ方を調べる
誰が、どのサービスを、どの業務に使っているかを調べましょう。個人で登録したサービスを業務に使う「シャドーAI」がないかを見るのが目的で、簡単なアンケートで構いません。
禁止する前に、現場が何に困って使っているのかを知っておくことが大切です。
責任者と関わる部署を決める
ルールの責任者を1人決め、総務・情報システム・法務・現場の代表で作る体制にします。
総務省の情報通信白書の調査では、「AIガバナンスの取組を推進する部署や責任者が明確になっている」と答えた日本の企業は35.9%でした。
ひな形を選んで骨組みを作る
ゼロから書かず、ひな形の章立てを借りて骨組みを作ります。どのひな形に何を足すかは、次の章で扱います。
自社の言葉で10項目を埋める
前の章の10項目を、自社の業務に合わせて書きましょう。最初に「使ってよいサービスの一覧」を決めると、ほかの項目が書きやすくなります。
「顧客の見積書」「社内の議事録」のように、現場で使う資料の名前で書くと迷いが減ります。
社内で確かめて承認する
いくつかの部署に試してもらい、守れないルールがないかを確かめます。守れないルールは、現場が黙って破る原因になります。直したうえで、経営層の承認を得て正式なルールにします。
周知し、研修で使い方を伝える
社内に公開するだけで終わらせず、研修で「なぜこのルールなのか」を伝えましょう。運用は後の章で扱います。
中堅・中小企業はA4数枚から始めてよい
厚い規程を最初から作る必要はないと当社は考えています。そのため当社では、次の4つを書いたA4数枚の最小構成から始めることを提案しています。
- 使ってよいサービスの一覧:サービス名と、使うアカウントの種類
- 入力してはいけない情報:入力禁止と、伏せれば入力してよいものの例
- 生成物を確かめる手順:社外に出す前に誰が何を確かめるか
- 相談の窓口:迷ったときと、事故の兆しを見つけたときの連絡先
内閣府の指針には、「各主体の規模や立場、AIがもたらすリスクに応じて…適切な水準で対応することが求められる」という考え方が示されています。使い方が広がるのに合わせて、残りの項目を足していきましょう。
既存の情報セキュリティ規程に足す方法
情報セキュリティ規程がある会社は、生成AIの章を足す形でも始められます。入力してはいけない情報の区分を、既存の機密の区分にそろえられるためです。
内閣府の指針の脚注にも「既存のITシステム等に適用されているガバナンスプロセスを活用することも有用である」とあります。製品・サービスを提供する事業者向けの項目の脚注ですが、考え方として参考になるでしょう。
AIの導入そのものの進め方から相談先を探す場合は、「AI導入支援会社の選び方・費用相場」で依頼できる内容を整理しています。
生成AIガイドラインのひな形・サンプルの使い方|JDLAのひな形に足すもの
結論として、ひな形は骨組みとして使い、中身は今の公的資料で補うのがおすすめです。代表的な民間のひな形は2023年に作られたもので、AIエージェントには触れていません。
| ひな形 | 出した機関・版 | 良いところ | 章立てにないもの・注意点 |
|---|---|---|---|
| 生成AIの利用ガイドライン | JDLA/第1.1版(2023年10月) | 入力と生成物の2部構成。【】の部分を自社用に書き換えて使える。Word形式で配布 | AIエージェント、操作履歴の管理、相談の窓口、見直しの時期 |
| 利用ルールのひな形 | デジタル庁のガイドライン第2.0版(2026年6月12日決定) | 利用前・利用中(入力・生成物)・問い合わせ先の章立て | 政府の職員向けで、民間企業向けではない |
JDLAのひな形の使い方
日本ディープラーニング協会(JDLA)のひな形は、組織内のガイドラインとして「最低限定めておいた方がよいと思われる事項を参考として示したもの」とされています。使い方のポイントは3つです。
- 2部構成を生かす:「データ入力に際して注意すべき事項」に10項目の④⑤を、「生成物を利用するに際して注意すべき事項」に⑥⑦を入れます
- 使ってよいサービスを列挙する:解説は「ホワイトリスト方式(利用してよいサービスを特定した上で列挙する方式)」を勧めています
- 【】を書き換える:「加筆修正を行って使うためのひな型」で、【】の中を自社用に改変する前提です
注意したいのは、第1.1版(2023年10月)から更新されていないことです。ChatGPTを例にした当時の記述が残っているため、サービス名や学習の扱いは今の規約に合わせて書き直し、自社の使い方に合わせて書き足してから使います。
ひな形に足すもの
ひな形をもとに骨組みを作ったら、次の項目が入っているかを確かめます。足りないものは、それぞれの章を見ながら書き足してください。
- AIエージェントと社員が作るツール:2026年に足すことへ
- 操作履歴の管理:2026年に足すことへ
- アカウントの決まり:入れる10項目の③へ
- 相談・報告の窓口、見直しの時期:作って終わりにしない運用へ
2026年の生成AIガイドラインに足すこと|AIエージェントと社員が作るツール
結論として、2026年の生成AIガイドラインには、チャットに何を入力するかに加えて、AIに任せてよい操作と、社員が自分で作るツールの扱いを足すことをおすすめします。
AIが文章を返すだけでなく、外部のサービスと連携して作業を自分で進める使い方が広がってきたためです。国の資料にも、その変化を受けた記述が加わっています。
チャットAI前提のルールのままでは足りない理由
| 資料 | 書かれていること |
|---|---|
| AI事業者ガイドライン第1.2版 | AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」と定義し、「人間の意図しない商品の注文やファイル削除等の動作を行う可能性がある」とする。外部システムやクラウドサービスと自律的に連携してタスクを実行するケースが増えているとも書かれている |
| 同 改訂内容の説明 | AI利用者向けに、操作履歴の確認、人の判断の介在、データの最小化が重要である旨を追記 |
| 人工知能基本計画 第Ⅱ期(2026年7月14日) | 「エージェント型AIの登場により、AIがもたらすリスクは相当に複雑化・深刻化している」 |
入力の線引きと生成物の確認だけのルールは、人が出力を読んでから使う前提です。AIが自分で操作を進めると、人が確かめる前に送信や削除の結果が出てしまうことがあります。たとえば、AIにメールの返信を任せた場合、人が文面を確かめる前に取引先へ送られてしまう、といったことが起こりえます。そのため、別の決まりが必要になります。
AIエージェントについて社内ルールに書く3つ
- 任せてよい操作の範囲:送信、削除、発注など、人の確認なしに実行させない操作を決めます。AI事業者ガイドラインの別添にある「人間の判断を介在させる仕組み」に沿う項目です
- 社員が自分で作るツール・エージェント:行政向けのデジタル庁のガイドライン第2.0版は、職員がAIエージェントを作れる生成AIシステムの場合、「出力結果の適切さの判断を行わずにタスクを実行するもの」について、作成を制限するか、利用開始前に報告を求めるルールを整えて周知するとしています。企業でも参考になる考え方です
- 操作の履歴を残し、定期的に確かめる:何を指示し、AIが何を実行したかの記録を残して見直します。第1.2版の利用者向けの追記に沿う項目です
AI事業者ガイドラインの別添には、コード生成AIの利用について「ノーコード生成ツールも含め、社内ノウハウを如何に蓄積するかが重要である」という記述もあります。作った人しか中身が分からない状態を避けるため、届け出の先と引き継ぎの方法も決めておくと安心です。
AIエージェントの仕組みは、「AIエージェントとは」で解説しています。
生成AIガイドラインを作って終わりにしない運用|周知・研修・見直し

結論として、生成AIガイドラインは社員に届き、定期的に見直されて初めて効き目が出ます。次の表は、当社が提案する運用の例です。
| いつ | 何をするか | 担当 |
|---|---|---|
| 公開するとき | 全社への周知と研修 | 責任者・総務 |
| 入社・異動のとき | ルールの説明と入力の線引きの確認 | 各部署の管理職 |
| 新しいサービスを使い始めるとき | 使ってよいサービスの一覧を見直す | 情報システム |
| 半年〜1年ごと | 国の指針の改訂と社内の使われ方を確かめて見直す | 責任者 |
| 事故の兆しがあったとき | 報告を受けて対応し、再発防止をルールに反映する | 相談窓口 |
研修で社員に伝えること
文書を配るだけでは、なぜその線引きなのかが伝わりません。研修では、禁止事項の理由、入力の線引きの実例、生成物の確かめ方の3つを、自社の資料を使って伝えることをおすすめします。
AI事業者ガイドラインは共通の指針に「教育・リテラシー」を、内閣府の指針は要素に「AIリテラシー」を挙げ、どちらも全ての主体に向けたものです。文化庁のチェックリストも「従業員等に対して著作権制度の理解を確認しておくことが必要です」としています。
研修の種類や費用の考え方は、「AI研修とは?種類・費用相場・選び方」で詳しく扱っています。
相談と報告の窓口を決める
窓口は、使い方に迷ったときに聞く先と、事故の兆しを見つけたときに伝える先の2つの役割で決めましょう。行政向けのデジタル庁の利用ルールのひな形も「問い合わせ先」を独立した章にしています。
窓口が決まっていないと、迷った社員は自己判断で使うか、使うこと自体をやめてしまいます。どちらも会社にとって望ましくないので、気軽に聞ける先を1つ決めておくことが大切です。
IPAの解説書は対策の一つに「規程違反時の対応(ペナルティ)の明確化」を挙げています。違反したときの扱いも、窓口とあわせて決めておきましょう。
生成AIガイドラインの見直しの頻度
AI事業者ガイドラインは2024年4月の第1.0版のあと、2024年11月、2025年3月、2026年3月と、2年ほどで4つの版が出ています。当社では、半年〜1年ごとに見直し、新しいサービスを使い始めるときはその都度見直す形がおすすめです。
内閣府の指針も基本方針に「アジャイルな対応」を挙げ、「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回しながら、柔軟・迅速」に対応するとしています。
見直しのたびに版の番号と日付をルールの冒頭に書いておくと、社員がどの版を見ているかがひと目で分かります。
生成AIガイドラインのよくある質問(FAQ)
生成AIガイドラインは必要ですか?小さな会社でも作るべきですか?
AI法や内閣府の指針で作成が求められているものではありません。ただ、社員が業務で生成AIを使うなら、入力してよい情報と生成物の確かめ方を決めておくと、判断のばらつきを防ぎやすくなります。
小さな会社は、使ってよいサービス・入力してはいけない情報・生成物の確認・相談の窓口の4つから始める形を、当社では提案しています。
国の生成AIガイドラインは何を見ればよいですか?
企業がまず読むのは、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」第1.2版の第5部「AI利用者」、個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」、文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」の3つです。
AI法と内閣府の指針は会社の位置づけを確かめるため、デジタル庁と文部科学省の資料は行政・学校の担当の方向けに読む資料です。
総務省の生成AIガイドラインとは何ですか?
企業向けの代表的なものは「AI事業者ガイドライン」で、総務省と経済産業省が共同でまとめています。最新は第1.2版(2026年3月31日)で、AIエージェントの定義が加わりました。
社内で生成AIを使う会社は「AI利用者」にあたり、本編の第5部と別添の利用者向けの項目が社内ルールの参考になります。
生成AIガイドラインで禁止されている事項は何ですか?
国が企業向けに一律の禁止事項を定めているわけではなく、禁止事項は各社がガイドラインで決めます。
例として、会社が認めていないサービスでの業務利用、他社から預かった秘密の入力、生成物を確かめずに社外へ出すことなどを禁止し、確かめれば使ってよい形とあわせて書く方法があります。
生成AIガイドラインに著作権について何を書けばよいですか?
文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、生成物を使う前に既存の著作物と類似していないかを確認することが必要としています。プロンプトなど生成の過程を確認できる状態にしておくことも、望まれる取り組みとして挙げています。
JDLAのひな形も、生成物に「著作権が発生しない可能性」を注意点に挙げています。個別の判断は、法務や専門家に相談する流れを決めておきます。
生成AIガイドラインに違反すると罰則はありますか?
AI法には罰則の章がありません。ただし入力や生成物の使い方によっては、個人情報保護法などの既存の法律の問題になり得ます。個人情報保護委員会も、条件によっては個人情報保護法の規定に「違反することとなる可能性がある」としています。
社内での扱いは、IPAの解説書が対策に挙げる「規程違反時の対応(ペナルティ)の明確化」を参考に、ガイドラインの中で決めておきます。
生成AIガイドラインのサンプルはどこにありますか?
民間企業向けでは、日本ディープラーニング協会(JDLA)が「生成AIの利用ガイドライン」のひな形をWord形式で公開しています。行政向けでは、デジタル庁のガイドライン第2.0版に職員向けの利用ルールのひな形の章立てが示されています。
どちらもそのまま使うのではなく、自社の業務に合わせて書き換え、AIエージェントや操作履歴の扱いを足して使います。
作って、届けて、見直す
まとめ|生成AIガイドラインは「10項目を決めて、研修で届け、定期的に見直す」
生成AIガイドラインは、社員が迷わずに生成AIを使うための社内ルールです。国の指針を参考に、自社に合う形で決めていきます。
本記事の要点
- 参照先は目的で選ぶ:企業はまず、AI事業者ガイドラインの利用者の項、個人情報保護委員会の注意喚起、文化庁のチェックリストの3つを読みます
- 10項目を根拠つきで決める:入力の前・使う前・困ったときに分けます
- ひな形はそのまま使わない:AIエージェントと操作履歴の管理を足します
- 作って終わりにしない:周知・研修と、半年〜1年ごとの見直しまでがセットです
国の指針は2026年に入ってからも改訂が続いています。このとおりに作れば問題が起きない、というものではなく、自社の使い方に合わせて育てていくものです。
まずは、社内で使われている生成AIサービスを一覧にするところから始めてみてください。誰が、どのサービスを、どの業務に使っているかが分かれば、ルールの骨組みが見えてきます。
もし「今の使い方を見直したい」「今後の事業の広がりも見据えてきちんと検討したい」「どこから手をつければよいか分からない」という方は、お気軽に当社へご相談ください。これまでの実績や活用事例とあわせてご説明します。


